均一

店の外にある本、そのコーナーを「均一」と呼ぶ。もちろん100円均一から来ているが、値段が各冊バラバラでも、外に出ている廉価本はそう呼ぶ。古本に関する著書の多い岡崎武志さんは「均一小僧」という異名をもつ。また岡崎さんの友人で京都の山本善行さんは「ゴッドハンド」という名で呼ばれる。どちらも均一から掘り出し物、いいものを見つけるのがうまいことから名づけられたようだ。またこういう場合、いいものを「抜く」という言い方もある。特に業者間で使われるか。例えば私が知り合いの古書店に行くと、「お、よく来てくれたね。バンバン抜いちゃってよ。」というような。山本さんの「ゴッドハンド」は、正に均一棚から希少本をサッと抜く、その神がかった手を指す。
S先生は数年前から、一ヶ月に1、2度いらっしゃる。いつも和服や洋服を粋に決めておられ、本を紙袋に入れようとすると、サッと風呂敷を出して包まれる。先生は結構なお年そうなので、既にリタイアされていると思う。専ら自分の愉しみのため、読むための本を均一から買われている。その買いっぷりは気持ちいい。「おお安いなあ」といいながら次々抜く。最初は持ち帰れる程度の量だったが、最近はこちらもドンドン安く放出していることもあり、先生の買い方もエスカレートしてきて、ダンボール1箱は買われるようになった。今日も外から戻ると、均一がガタガタになっている。案の定S先生だった。S先生が10人くらいいて、日替わりで来てくれればいいのになあ。