蔵書

とある地方都市へ仕入れに行く。事前に聞いていた本の量はかなりあるとのことだったので、こちらもそのつもりでトラックを手配して伺った。が、ちょっと予想と違った。大抵、一般の方の「たくさん」は古書店にとってはあまり「たくさん」でないことが多い。日々市場で取引されている量や自店の在庫や倉庫を見ていると、量の多い少ないの感覚が当然お客さんとはズレていく。またその処分を依頼する人が本を集めた本人でない場合、量の見積もり方が実際と違う場合も多々ある。
今回はそういった量の見積もり方のギャップが逆に働いた。我々業者が驚くほどの量だった。一人の人間がこんなに本を所有できるんだというのが正直な感想。恐らく、生涯一度も本を処分しなかったと思われる。日曜大工も趣味だったようで、木材で棚を自作し、スチール棚やカラーボックスを組み合わせて、至る所に棚を作って収納している。書斎を出て、徐々に家の中を侵食していく「本」と「棚」たち。ここまでいくと、ある種の狂気を感じる。