K書房

H県の学生から注文してもらったのだが、1人だけS全集でなくK全集だった。こちらも既に新版が出ており(と言っても20年以上前だが)、それは常備しているが、あいにく旧版のは在庫は無かった。知り合いのK書房さんに社長がお願いしていたようで、昨日届けていただいた。
Kさんはもう70過ぎと思われるが、今でも元気にオートバイで古書会館まで通っている。もちろんたくさんの荷物を積んで。Kさんの得意は全集物で、しかもバラから揃えるということに関しては唯一の業者さんだ。
全集は揃ってナンボであり、分売・バラ売りではその単価は激減する。市場にもそういうバラや不揃いが大山で出てくるのだが、揃いではどんなに高くても二束三文。それを買ってセットにしてしまうのがKさんだ。安いからと言ってもそう簡単に揃うものでない。概して全集・シリーズ物は、最初の配本からある程度までは話題性などでそれなりの部数が出ていても、終わりに向かって段々部数が減る。2、3冊ならともかく、10冊以上20−30巻となれば、個人で購入している人は確実についていけなくなるのだ。そうなると終わりの方の配本は、当然単体として市場に出回りにくくなる。それら見つけにくい部分を「キキメ」という。「キキメ」を把握しつつうまく見つけてセットにするのは、それなりのテクニックと辛抱と場所がいる。お客さんでバラを均一で見つけて集め始める人がいる。よく聞くのは「もう何年も集めているよー」という言葉。それぐらい揃えるのは難しい。
そうやって多少時間はかかっても、揃えば十万二十万というものがいくつもあった全集物だが、近年の値下がり甚だしく、せっかく揃えても大した値段にならないことも多くなったようだ。Kさんもいつもぼやいている。揃いを買った方が安いよと。
ウチにもそういう不揃いがいくつかある。売り物ではないし、場所塞ぎだし、いっそ売ってしまえばとも思うが、バラでは数百円にしかならないだろう。揃えば何万するとわかっている以上、なかなか出せない。寝かして高くなるいいけど、安くなるんだから・・と社長もぼやく。そうは言いながら、でもじっと欠本と出会うのを待っている。